健康なんでも相談室

認知症の検査

回答者:  鳥取県東部医師会会員 渡辺 憲

 

質問

 85歳の母の物忘れについてお願いします。半年前から、自分で言ったことを完全に忘れていることが目立つようになりました。日常生活は一人で行えていますが、忘れていることを認めず、怒りっぽくなりました。たまたま、転倒して頭部を打撲した際に、脳外科でCTを撮ってもらったのですが、これといった異常はないと言われました。CTで異常がなければ認知症の可能性は低いのでしょうか?また、他にはどんな検査方法があるでしょうか?



回答

 MRI、脳血流検査が有用

 

 ご心配のことと思います。ここ半年ほどのご様子をお聞きして、認知症の可能性について精査は必要と考えます。

 認知症(とくにアルツハイマー型)は記憶力の衰えから病状が始まることが多く、エピソード記憶の障害(出来事全体を思い出せない)が特徴とされます。まさに、お母様のここ半年の症状に相当します。

 認知機能の衰えは、心理検査(長谷川式、ミニメンタルステート検査等)で調べ、どの認知機能がどの程度衰えているかを数値化して調べることができます。また、認知症に伴う脳の変化は、CTスキャンでも精査可能ですが、MRIですと記憶に関連した側頭葉の内側面(海馬)の様子をより詳しく描出できます。さらに、脳の機能の衰えを脳血流の低下部位に見立てて画像表示する脳血流シンチグラフィー(SPECT)検査は、認知症の診断に有力な手がかりとなります。

 以上の心理検査、MRI、SPECT検査は、「物忘れ外来」等を併設した神経内科、精神科などの医療機関で行うことができますので、一度、受診されることをお勧めします。また、早期の診断、治療が、お母様が今後も元気に現在の生活を続けていただくことにもつながりますので、粘り強く接してあげて下さい。