健康なんでも相談室

認知症による幻覚?

回答者:  鳥取県東部医師会員 渡辺 憲

質問

 93歳の母についてです。以前は充分しっかりとコミュニケーションがとれていたのですが、3か月前に高齢者施設を移動してから認知症と思われることが多くなりました。物忘れが増えたことなどはあまり心配していないのですが、最近はよく幻覚を見るようで、特に電化製品のオンオフくらいの小さい光が気になり、夜になるとその光が空中を移動すると言ってコンセントを抜いています。お風呂に蛇がいたなどとも言いました。こういった症状はもう高齢なので静観してその都度対処するようにすればよいのでしょうか。認知症を遅らせる薬もあると聞きましたが、診察してそういったものを飲むことは93歳でも有効なのでしょうか。

 

 

回答

 レビー小体型認知症の可能性

 

 ご心配のことと思います。現実にないものが見える症状を幻視と言いますが、お母様には幻視の症状が認められます。幻視は、高齢になって視力が低下することに関連して出現する場合(シャルル=ボネ症候群)もありますが、認知機能の衰えに伴って、認知症の症状の一つとして現れている可能性が考えられます。幻視が最も現れやすい認知症のタイプとして、レビー小体型認知症が挙げられ、50歳台~80歳台(それ以上)の幅広い年齢に出現します。お母様の場合もこの病気に罹患している可能性があります。アルツハイマー型認知症に用いられている認知機能を高める薬(アリセプト)が幻視に対しても有効なことがあり、認知機能の衰えと合わせて治療効果が期待できる可能性があります。一度、認知症専門医への相談をお勧めします。また、昼間に会話をしながら明るい所で活動的に過ごしていただくことが、夜間の症状を軽減につながることもありますので、生活の工夫をしてみてください。