健康なんでも相談室

夜間の尿漏れ

回答者:  鳥取県東部医師会員 太田匡彦

質問

 70代女性。夜間に尿意で目が覚め、ベッドから降りて歩き始めると、動作が緩慢なこともあり、トイレに間に合わず、尿漏れをしてしまいます。どのようにしたら夜間の尿漏れが防げるでしょうか。

 

 

回答

 切迫性尿失禁の原因と治療

 女性の10~12%が定期的に尿失禁を経験していると言われます。女性に最も多い尿失禁のタイプは、腹圧性尿失禁で、25~49歳ぐらいで多く、その後は加齢とともに減少していきます。続いて多い切迫性尿失禁は、50代~60代で急増し、老化につれて増えていきます。まず、この症例では、切迫性尿失禁の可能性を考えます。切迫性尿失禁は膀胱の排尿筋の過活動によって起こる過活動膀胱と呼ばれる病気が原因です。過活動膀胱は50歳以上女性で8人に1人、70歳代女性で、5人に1人がかかります。治療法としては、排尿筋の過活動を抑える薬物治療が非常に有効ですが、口渇や便秘などの副作用があります。骨盤底筋運動や電気刺激により括約筋を強化する理学療法、畜尿訓練により膀胱の許容量を増やす行動療法なども有効ですが、老化が原因なので、長く続ける必要があります。その他、動作が緩慢な高齢者の場合、手すりをつける、移動式トイレをおく、便座を高くする、着脱しやすい服にするなどのトイレ環境を整える方法がとられることがあります。夜間飲水過剰、食塩摂取過剰、肥満、便秘、睡眠時間の不規則などは夜間頻尿(排尿のため就寝中に1回でも起きる状態)をもたらし、過活動膀胱の症状を助長させてしまいます。よって生活習慣の是正も重要となります。いずれにしろ、病気や薬物治療に対して正しい知識と適切な運動や生活指導が必要となりますので、身近な泌尿器科専門医の受診を勧めます。