保健の窓

漢方とはなんであろうか

鳥取市 おか内科クリニック 岡 新治

漢方とはなんであろうか

  体調不良になると病院や診療所を訪れ現代医学の治療を受けることになる。その進歩はめざましく血液・尿・生理学的検査、画像診断などによりいつでもどこでも誰でも科学的・合理的な病気の診断・治療が可能となっている。一昔前にはなかった新薬が製造され使用されている。ところが現代医学の薬と共に古くは約二千年前に登場した漢方薬がしばしば含まれている。風邪の葛根湯、腰痛の八味地黄丸、肝炎の小柴胡湯、不安の半夏厚朴湯、消化不良の六君子湯、鼻炎の小青竜湯、生理不順の当帰芍薬散、インフルエンザの麻黄湯、腹痛の大建中湯、物忘れの抑肝散などである。漢方の研究は現在も大学で精力的に行われているが保険に収載されている約130種類のエキス剤は大部分が非常に古い時代に作られたものである。現代医学の治療においても漢方薬が使用される理由は何であろうか。その一つとして漢方は、現代医学では対象となりにくい個々人の病気の状態(病態)を重視しているからであろう。現代医学では客観的な病名と身長、体重、年齢などにより治療方針や薬の内容が決定される。漢方では同じ病名に対して異なる処方があり逆に異なる病名に対して同じ処方が用いられる場合がある。

 

  

 

漢方の長所について

 風邪で高熱を発し関節痛があれば麻黄湯、首肩のこりがあれば葛根湯、汗が多い場合には桂枝湯、鼻炎が中心ならば小青竜湯などと同じ病名でも病気の状態(病態)によって薬が異なる。病態は原因となるウイルスと風邪を引いた患者の体質との相対的な関係により時間と共に変化する。このような病態というものは客観性、合理性を追求する現代医学の対象とはなりにくくここに漢方の長所がある。熱の多すぎる人には熱をうまく外に出してなおし、熱が十分に作れない人には温めて治療する。相対的だからこそ個々人に最適の治療が選択できる。自分にぴったりのものが見つかると自分に合っていることが感じられうれしくなる。そういう漢方薬に一度でも出会う事ができれば幸せだと思う。そして漢方は病気の原因が判然としない場合でも病態をみて治療が可能である。妊婦さんや授乳婦さんそして現代医薬がどうしても適さない方にも比較的安心して内服していただけるのも漢方の長所です。エキス剤は大部分が粉薬ですが最近では錠剤も準備され飲みやすくなっています。乳幼児・学童にも工夫して飲んでいたくことが可能です。漢方処方を希望される場合はかかり付けの医療機関でご相談ください。