保健の窓

運動器の健康を維持するために~ロコモティブシンドロームを知って、予防に活かそう~

鳥取市立病院 整形外科 内野崇彦

~ロコモティブシンドロームとは何か?~

  日本は2007年に超高齢社会へ突入し、平均寿命は男性では80歳、女性では86歳となっています。近年では、健康寿命という概念があり、これは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。平均寿命と健康寿命の間には男性で約9年、女性で約12年の乖離があり、この乖離を生む原因の多くは運動器疾患により移動能力が低下してしまうことです。実際に、介護が必要になった理由のうちで骨と関節という運動器の疾患が占める割合は全体の約1/4を占めています。この運動器の障害のために、要介護になっていたり、要介護になるリスクが高い状態のことを「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」といいます。このロコモは2007年より日本整形外科学会により普及・啓発活動が行われておりますが、その認知度は50%にも満たず、理解度では20%にとどまっているのが現状です。まずは、ロコモティブシンドロームを知って理解することが重要です。そして、それをもとに自分に合った予防方法についても考える一助になればと思います。介護の入り口ともいえるロコモティブシンドロームを予防し、運動器の健康を維持することで健康寿命の延伸につなげましょう。 

 

 

~ロコモティブシンドロームの評価と予防・改善~

 前回、介護が必要になる主な原因としてロコモティブシンドローム(ロコモ)があることをお話しました。ロコモかどうかを簡便に判定する方法としてロコチェックというものがあるのでご紹介したいと思います。ロコチェックは、①片脚立ちで靴下がはけない、②家の中で躓いたり滑ったりする、③階段を上るのに手すりが必要である、④家のやや重い仕事が困難である、⑤2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である、⑥15分くらい続けて歩くことができない、⑦横断歩道を青信号で渡り切れない、以上の7項目からなります。これらのうち1つでも当てはまる場合はロコモである可能性があります。これらが当てはまる方にはロコモを予防したり改善したりするためのトレーニング(ロコトレ)を行うことをお勧めします。本日はロコトレの1つとして開眼片脚立ちについてご紹介させていただきます。開眼片脚立ちは、開眼で一方の脚を5~10cm程度上げて他方の脚で立つというものです。これを左右1分間ずつ1日3回行うことが推奨されています。公開健康講座ではこの他にもロコモについてのいろいろな話をしたいと思いますので、ご都合が会う方はご参加いただければ幸いです。