保健の窓

高齢者の白血病治療は進歩しています

鳥取市 クリニックこくふ 日野理彦

70歳まで同種骨髄移植

 同種骨髄移植は他人の骨髄を移植します。いろいろの血液がんの難治例の治療において、同種骨髄移植はしばしば根治療法になることができます。血液がん治療の中で重要な位置を占めています。特に白血病が再発した場合には骨髄移植に頼ることになります。同種骨髄移植が若い人に適した治療法であることは、今も昔も変わりません。移植前の抗ガン剤や放射線治療が強いので患者さんに身体的負担が大きく、リスクが高いのです。拒絶反応や合併症との闘いもあります。移植は40歳までといわれといわれていた時代がありました。骨髄移植の技術が進歩して、最近では通常の同種骨髄移植は60歳前後まで可能になっています。更にミニ移植ともいわれる骨髄非破壊的同種骨髄移植の技術が進歩しています。移植前治療を抑えて、免疫抑制剤を調節して移植を成立させる方法です。この方法で、今では70歳前後まで同種骨髄移植が可能です。高齢者の白血病再発や骨髄異型性症候群ではミニ移植によって治癒が期待できます。もちろん心臓、肺、腎臓、肝臓などの臓器に障害がないことが条件になります。骨髄移植の成功率を高める努力が続けられています。

 

 

飲み薬で治る時代へ?

 慢性骨髄性白血病は20数年前までは骨髄移植しなければ数年のうちに難治性の急性白血病に移行していました。骨髄移植して助かる人は約半数でした。TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)という内服薬ができて、多くの人が病状を悪化させることなく生きられる様になりました。それでも高価な薬を一生飲み続けなければなりませんでした。TKIができて約25年になります。この薬についてデータが蓄積されてきました。治療経過が良くて、長く治療している人の中に、治療を中止しても白血病が再発しないで長期間生きられる人が明らかになってきました。現在、ストップ試験と言われる研究が進んでいます。TKI治療を数年間継続し、今の医学レベルで、遺伝子検査の検出限界まで白血病細胞が減少して、更に数年間安定している人はTKI治療を中止するのです。この経過に4~7年はかかるでしょう。治療を中止した人の約半数は再発しないという結果がでています。今後、長い経過を見て判断しなければなりませんが、白血病が治った可能性があります。きちんと治療すれば慢性骨髄性白血病は飲み薬で治る時代になったと言えるでしょう。