保健の窓

毎日のお通じは快調ですか?

米子市 消化器クリニック米川医院 院長 米川正夫

便秘とは「便を秘めること」

  平成25年度の厚生労働省の調査によると、便秘の症状を持っている人は、男性が1000人辺り26.0人、女性が48.7人です。特に女性は、20代から便秘の人が男性の4倍以上となり、男性も60代から数が増え始め、男女とも70代を超えると約10%の人が便秘です。若い女性に便秘が多いのは黄体ホルモンの影響や、排便を我慢したりすることが多いからだと考えられます。高齢になると、筋力低下や腸の感覚が鈍くなり便意を感じにくくなるのが原因ではないでしょうか?ただ、有病率を計算すると女性が4.9%、男性が2.6%しか便秘のいないことになり、当院を受診する患者さんで「便秘」を訴える方はもっと多い印象があります。みなさん便秘とは何日も便が出ないことだと思っていませんか?便秘とは「便が出ないこと」ではなく「便を秘める」ことです。ですから毎日便が出ていても、すっきり出ずに中に残っていたら便秘なのです。また肛門に便がたまっているのに便意が来ない状態も便秘です。便秘に隠れた重篤な疾患を見逃さないことが大切です。特に、直腸癌、大腸癌、イレウス、虫垂炎、卵巣嚢腫茎捻転、子宮外妊娠などは見落とすと生命にかかわります。

 

 

毎日出ていても便秘!?

 直腸内に便が残っている状態が続くと、便塞栓を引き起こします。これは、直腸内に残った便の量と硬さが、自力で排便できる限界を超えた状態です。典型的なケースは、普段から便秘気味の方が、頻回の便意、肛門痛、腹痛、便失禁を訴えて来院されます。このときの失禁は、直腸内に詰まった硬い便を押し出そうとして腸管の蠕動運動が亢進するために、硬い便の奥の軟便が直腸内の便塊をよけるように漏れ出てしまうために起こります。そのため、患者さんは毎日便は出ていたと言われます。このような患者さんに単に下剤を投与すると、憩室の穿孔を起こすことがあり、緊急手術が必要となります。対応が遅れると、お腹の中に漏れた便により汎発性腹膜炎を起こし、敗血症となり不幸な結果を招きかねません。まず、直腸内に残った硬い便を摘出したあと、浣腸や座薬で奥に残った便を排便してもらい腸の中を空にします。その後、単に下剤を処方するだけではなく、浣腸や座薬を使って毎日直腸を空にすることが大切です。また、食物繊維の多い食事(雑穀、煮た野菜、根菜類、納豆、海草、オクラや山芋などネバネバ・ドロドロしたもの)を心がけることや排便時の体位なども指導します。