保健の窓

皮膚を知って皮膚病対策 ~秋から冬に気をつけたいこと~

鳥取大学医学部附属病院皮膚科 准教授 山田七子

乾燥と皮膚バリア機能

 皮膚は体の最も表層にあり、外界の様々な物質と最初に接する臓器の一つです。皮膚には環境抗原や刺激物、病原体の侵入を防ぐ「外側から内側」へのバリアと体内から体外への水分喪失を防ぐ「内側から外側」のバリア機能があります。このバリア機能を支えているのが皮膚の再表層の構造である「角層」とその表面を覆う「皮脂膜」です。角層では、角質細胞が層状に積み重なり、その隙間を角層細胞間脂質が埋めています。角質細胞の中には天然保湿因子があります。皮脂膜は脂腺、角質細胞間脂質、汗が皮膚表面で混ざり合ったもので角層表面を覆うことで皮膚表面からの水分の蒸発を防いでいます。このようなバリア機能が備わっているにもかかわらず、秋から冬にかけては、皮膚が乾燥しやすくなります。外気温が低い時に室温を20℃以上にしようとすると、最近の家屋の気密性の向上や暖房の普及により、室内の湿度が下がり、乾燥しやすくなるのです。また、入浴方法によっては皮脂が取れやすくなります。このような状況では、成人とくに高齢になると、もともと皮脂分泌の少ない腰、向こうずね(下腿伸側)、次いで肩、太もも、うでが乾燥しやすくなります。

 

 

乾燥による皮膚病と対策

 乾燥した皮膚はキメが荒くなり、表面が粉をふいたようになります。ひび割れたようになることもあります。このような皮膚ではわずかな刺激でかゆみが起こりやすく、掻き続けるとその部分に炎症が起こり湿疹になります。こうして生じた湿疹を「皮脂欠乏性湿疹」と言いますが、湿疹が貨幣のように円い形をとる時には「貨幣状湿疹」といいます。貨幣状湿疹では湿疹部分はじくじくとした湿潤した状態になりやすく、放置したままにするとかゆみはさらに強くなり、小さな湿疹が全身に生じるようになります。このような状態を「自家感作性皮膚炎」といい、治療に長い期間を要します。

自宅でできる秋から冬の皮膚乾燥対策には①加湿器の利用②入浴方法の工夫(高温・長湯を避ける、石鹸をよく泡立て手や柔らかい布で優しく洗う)③入浴後に保湿をする④電気毛布使用法の工夫⑤化繊の肌着を避けるなどがあります。しかし、湿疹が生じた場合は生活上の工夫や保湿剤の使用だけでは不十分であり、抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用による治療が必要です。湿疹と紛らわしい他の皮膚疾患や、内臓疾患による皮膚の乾燥もありますので、まずは皮膚科を受診しましょう。