保健の窓

パーキンソン病といろいろな”ふるえ”

鳥取大学医学部脳神経内科 教授 花島律子

パーキンソン病とは?

 パーキンソン病は、体の動きを調節する役割をもつ脳内のドパミンという物質が足りなくなるために起こる病気です。どうして、ドパミンを作る黒質の神経細胞が減ってしまうのかは、まだ十分にわかっていません。パーキンソン病では、動作が遅くなる、歩行が遅くなる、震える、筋肉がこわばる、つまずきやすいなどの症状がみられ、少しずつ進んでいきます。運動以外にも、体に痛みを感じる、便秘になりやすい、気持ちがおちこむなどの症状がみられることもあります。パーキンソン病は、神経難病の一つですが、症状を抑える有効なお薬が沢山あります。主に不足しているドパミンを補充するお薬を使います。ドパミン補充薬の他にも、ドパミンと同じような働きをするドパミン受容体作動薬や、ドパミンが分解されるのを防ぎ効果を長持ちされる分解阻害薬など色々な種類のお薬があります。それぞれの長所をいかして、症状をみながら組み合わせて治療していきます。また、パーキンソン病以外でも似た症状をだす病気がありますので、診断をしっかりつけることが大切です。次回は進行していくとどうなるか解説したいと思います。

 

 

 

 

パーキンソン病が進むと

 今回はパーキンソン病が進行していったときの問題点を解説したいと思います。パーキンソン病の治療薬は、根本的な治療薬ではないため、症状を抑えても病気はゆっくり進んでいきます。病気が進行すると、ドパミンの効果が出る時間が短くなり次のお薬を飲むまでに切れてしまう、ドパミンを飲むと体に無駄な動きがでてしまうなどの症状が出たり、よく転ぶ、起き上がれない、歩けない、飲み込みにくいなど生活に困る状態になったりします。また、幻視や物忘れが出現する場合もあります。このような進行期には、一日中効果が持続し副作用なく過ごせるように、色々な種類の薬を症状に合わせて組み合せて使います。長く効果が持続する徐放剤や皮膚の上に貼るタイプの貼付剤など新しい形状の薬なども最近では使われます。また、深部脳刺激や経腸ドパミンゲルの持続投与など機械を用いた新しい治療法も開発されています。進行期の生活を支えるためには、病院での治療だけではなく、リハビリや、介護・看護の手配など地域で包括的にサポートする体制を整えることが重要となってきます。サポートのための医療制度がありますので、患者さんはかかりつけ医に相談してください。