保健の窓

難聴と補聴器のお話

山陰労災病院 耳鼻咽喉科 杉原三郎

聞こえが悪くなったら

 歳をとると個人差はあれ、誰でも聞こえが悪くなります。日常生活や仕事上、講演会や友人との楽しい会話の時に聞き取りにくいと感じたら、何はともあれ耳鼻咽喉科の診察を受けてください。病気の有無、難聴の種類と程度がわかります。歳のせいだと思っていても、治療で軽快したり逆に怖い病気が見つかる場合もあります。ある難聴の患者さんは両側外耳道に耳垢(みみあか)が充満しており、除去したら聞こえが改善しました。長年綿棒で耳掃除したために耳垢が奥で蓋をした状態でした。鼓膜の奥の部屋(中耳)に分泌物が溜まる(滲出性中耳炎)ために難聴であった患者さんは、鼓膜の処置だけで改善しました。また難聴と耳漏(耳から膿が出る)の患者さんは鼓膜穿孔がありました。鼓膜穿孔のために聞こえが悪いだけなので鼓室形成術(鼓膜形成と周囲の部屋の掃除)で耳漏が停止し聴力も改善して喜ばれました。しかし同じような難聴と耳漏の患者さんでも、鼓膜の一部が奥に入り込み、周囲の骨を破壊して難聴だけでなくめまい、顔面神経麻痺を起こしたり脳内に入り込む真珠腫性中耳炎が時々発見されます。見えない所なので自己判断せず、耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。

 

 

補聴器を使うためには

 個人差はありますが、歳をとると誰でも聞こえは悪くなります。長い人生を聞こえにくいまま不便な生活を続けるわけにもいきません。そこで補聴器を思いつき補聴器店へ。しかしちょっとお待ち下さい。まず耳鼻咽喉科の診察を受けて下さい。その結果老人性難聴であり補聴器を希望される人に日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医が、認定補聴器専門店や認定補聴器技能者のいる補聴器店へ検査データを付けて紹介状を書きます。老人性難聴の特徴は、小さい音はきこえないのは当然ですが、ちょっと大きな音はうるさく歪んで聞こることです。さらに早口やぼそぼそと話されると音は聞こえても内容がわかりません。ですから近くではっきり、ゆっくり、顔を見て、適度な大きさで話す必要があります。補聴器を作るときには、音が大きすぎてうるさくならないように、会話が聞きやすいような特性になるように専門家の調整が必要となります。かけたとたんに善し悪しがわかるメガネとは全然ちがいます。自分に合わせて作りその後も微調整をする入れ歯と同じと考えて下さい。補聴器も多種あるので扱いやすい型や美容的にも満足できるものが必ず見つかるはずです。