公益社団法人 鳥取県医師会

保健の窓

心不全パンデミックから、わが身を守ろう

鳥取大学医学部附属病院 循環器内科 教授 山本一博

心不全を知ろう

 心不全という病名をご存知ですか?わが国では心疾患で亡くなる方が悪性新生物(がんなど)で亡くなる方に次いで多く、心疾患の中で最も多い死因が心不全です。かつて心疾患で亡くなるというと急性心筋梗塞がすぐに頭に思い浮かんでいたと思いますが、今では心不全による死亡者数は急性心筋梗塞による死亡者数の2倍になっています。心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気で(日本循環器学会と日本心不全学会による定義)、加齢とともにかかりやすくなります。ただし、息切れやむくみといった症状は心不全以外の病気でも起こるので、症状のみから心不全と診断することは難しく、医療機関で行う色々な検査で初めて診断できます。また、“心臓を悪くする”原因は、弁膜症、心筋症、虚血性心疾患、不整脈など多岐にわたり、各原因で治療方針は異なります。心不全患者さんの平均余命は、がん患者さんの平均余命とほぼ同じというデータが発表されています。心不全に対する基本姿勢は、ならなくてすむように予防する、なったら早めに治療を開始する、ということです。次回は、予防と治療についてお話をさせていただきます。

 

 

心不全の予防と治療

 心不全になる危険因子として高血圧、糖尿病、肥満が有名です。該当する患者さん、つまり心不全予備群は多いのですが、これらの疾患だけでは苦痛を自覚しないためか、治療の必要性や無治療で放置する危険性が十分認識されていません。体がしんどくなって始める治療と、しんどくなる前に始める治療では、しんどくなる前に始める治療の方が圧倒的に有効です。虫歯になって歯を抜くのか、虫歯にならないように毎日歯磨きをするのか、どちらを選びますか?高血圧や糖尿病の治療を受け肥満を是正して、心不全を予防しましょう。もしも心不全になったら、適切な治療を早く開始する必要があります。心不全かなと思ったら(先週のコラム参照)、かかりつけ医に循環器専門医受診の必要性を相談してください。治療法には薬物療法とカテーテルや手術による非薬物療法があり、“心臓を悪くする”原因に応じて組み合わせます。ただし心不全とは 治るものではないので、一生薬を飲み続ける必要があります。また、塩分の摂取量を抑える、適度な運動を継続するなど日常生活の管理が治療効果を大きく左右します。早く発見し、早く治療を開始し、うまく付き合うことが心不全には求められます。