Joy!しろうさぎ通信『新米女医かつ新米ママ』

鳥取大学医学部附属病院 内分泌内科  有 馬 那 帆

早いもので鳥取県に住み始めてから10年、医師になってから4年が経とうとしています。現在、鳥取大学附属病院内分泌代謝内科の医師として勤務しております。私生活では研修医時代に鳥取県出身の夫と結婚、医師3年目に出産し、夫・1歳半になる娘と3人で暮らしております。医師としても母としても新米であり毎日余裕なく、当院のワークライフバランスセンターに相談に行ったこともあり、この度原稿を書かせていただく経緯となりました。これまでの諸先輩方の「Joy! しろうさぎ通信」を拝読し、先輩方も必死に生活されてきたのだろうな、自分は甘えすぎているのではないかと思いながら現在の生活・悩みについて記そうと思います。

学生時代に山間部の地区全体の健康問題に取り組むサークルに所属していた影響が大きく、漠然と生活習慣病を専門とした内科医になりたいと思っていました。研修医になるときには8割くらい糖尿病内科医になろうと決めていました。初期研修2年目に夫と結婚しましたが生活はそれほど変化しませんでした。研修医2年目の途中で長女の妊娠が発覚しました。親孝行な娘で悪阻もなく、当時循環器内科ローテ中であったためカテ治療は免除していただきましたが、その他とくに休むことなく研修を終えられました。医師3年目には予定通り(?)、母校の内分泌内科に入局し糖尿病内科医としての人生が始まりました。まだまだ学ばなくてはならないことだらけの中、妊娠中の私は急患当番や日当直勤務を免除していただき、下っ端なのになにも貢献できないことに焦りと申し訳なさを感じていました。日々の診療をそつなくこなす周りの先生方からおいていかれるような感じでした。入局後3ヶ月目より産休に入らせていただき無事に長女を出産しました。医師として駆け出しであった私はいつから復帰するかとても悩みましたが、上司のアドバイスもあり娘が6ヶ月になるまでは育休をいただきました。復帰後、院内の保育所に預けられたことは大変ありがたく、子育ても慣れない、仕事も慣れない私にとって生活の支えでした。実家が遠く、夫の実家も仕事などで頼れない私たち夫婦にとって保育園が頼りでした。復帰前から子育て経験のある先生方には「入所後3ヶ月は本当に休みばっかりだよ。」と脅されていましたが、本当にその通りで月の3分の1は休んでいました。その度に入院中の患者さんをお願いしなくてはならず、同期の2人には特に感謝しています。急患当番も何度も代わってもらい、本当に申し訳なく毎日謝ってばかりの日々でした。夫は私が復帰して4ヶ月目から精神科医となりました。夫が研修医の頃はまだなんとかなっていたものも、外勤当直があったり、学会があったりと急に抜けられないことも多くなりました。私は土日に病院に行かないといけないこともあり、抱っこ紐で娘を医局に連れて行って仕事をすることもしばしばありました。平日できない離乳食のストックを作ったり、保育所で必要な物を買いに行ったりととにかく毎日必死に過ごしていました。医師として知らないことが多く勉強が必要なのに、夕方から始まるカンファや勉強会には出られない葛藤もありました。日々の診療や空き時間に自学するしかないのに、心に余裕がなく甘えている自分に対して、つらく感じることも多かったです。娘が1歳になり可愛くて仕方がなくなった頃、ふとこのままの生活を続けるのかと考え、私には厳しいなという結論にいたりました。悩みに悩んだ結果、上司に現状を話し、今後の働き方について一緒に考えていただきました。教授にも相談させていただき、結論としては非常勤医師として週2日のみ働くといった形となりました。医局の前例では医師として未熟な状態で出産をした女医はあまりおらず、医局が私のわがままを全面的に受け入れてくださったことは大変ありがたく思います。一方で、また医師として出遅れてしまうなとさらに悩むこともあります。昨今、男女平等に働けるように、と言われておりますが実際には不可能だと感じております。仕事上は可能かもしれませんが家庭での父・母の役割は異なるように感じます。また夫にお願いして職場の飲み会に参加すると、周りの先生方は「娘さんは旦那さんがみているの?」と気にかけてくださいますが、夫が飲み会に参加しても「奥さんがみているの?」とは言われません。夫は子育ても家事も十分してくれ、不満ではありませんが、世間から見ればたとえ共働きでも子育ては母メインなのだと感じてしまいます。

現在、非常勤医師になって2ヶ月が経とうとしておりますが、冷静になって考えてみるとこんな使えない医師でも置いてもらえている医局には、ありがたいなと感じております。今後、現在の勤務形態をいつまで続けるか考えてもいませんが、私にとっては今の生活が心地よいです。甘えたことばかり言っており、夫・娘、医局の先生方の支えがあってこそ成り立っている生活ですが、まだあと30年以上は働かないといけないのでのんびり成長できたらなと思っています。先輩方、なにかアドバイスがありましたらご連絡いただけると幸いです。今後ともご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。