Joy!しろうさぎ通信『大学に勤務する女性医師の現状について』

 

鳥取大学医学部附属病院 消化器内科 検査部  法 正 恵 子

医師会事務の方から督促電話があり、慌てて原稿を書いています。鳥取県医師会に再加入せず、「しろうさぎ通信」を書くことになってしまった理由は…。日本消化器病学会中国支部の女性医師の会の鳥取県担当となり、未だ出産後の女性医師の復帰や学会参加も難しいという状況である事を知りました。8年も前の事ですが、留学中のアメリカの学会では、託児・学童保育は完備、学会場には親子連れがウロウロ、自分が発表するポスターパネルの下で子供を遊ばせている某国の女性研究者もおり、誰も咎めるヒトもいませんでした。最近では日本でも色々な学会で託児所を併設するようになりましたが、未だ利用する医師が少なく、先日、米子で開催された内科学会地方会の託児室では1:3の手厚い保育となっていました。このような状況であり、鳥取県医師会の長年培ってこられたであろう工夫や対策を知りたいと思い、たまたま目にした「鳥取県女性医師の会」に参加したところ、実は第1回目であった事を会場で知りました。そこで原稿執筆を依頼されたのでした…。しかし、参加してみて、皆さんが色々な思いを持って仕事をされている事が分かり、非常に有意義な時間を過ごす事ができました。そして
若い方から大先輩の幅広い年齢層の女性医師がおられ、大変心強く感じました。

「大学に勤務する女性医師の現状」について、ですが、平成28年に開催された第106回日本消化器病学会中国支部例会で発表したデータの一部をご紹介します(図1、2)。当時、某新聞に「鳥取県は女性のストレスが一番少ない県」と掲載されましたが、そんな実感は微塵も無く、鳥取大学医学科学生&研修医と、消化器・腎臓内科の同門医師にご協力頂き、女性医師が働き続ける事は可能か、女性医師と一緒に働く事をどう思うか、というアンケートをとりました。回答者の男女比は、学生は6:4、医師は8:2です。詳細なデータは省きますが、グラフに示すように、意外なことに学生・医師とも、大部分が女性医師の勤務継続は可能で、一緒に働くのを歓迎する、という意見でした。消化器・腎臓内科の場合、女性医師の数が少ない為、女性医師全体の意見とは多少違うかもしれませんし、内科系男性医師の意見のみで偏りはあるかもしれませんが、参考にはなるかと思います。

大学病院には大変有り難い事に、男女共同参画推進室やワークライフバランス支援センターが存在し、育児や介護などバランスの取れない女性医師を支援する制度があります。私もこの制度を利用し、男女共同参画推進室の支援で学生アルバイトを雇用し、データ収集や実験の手伝いをして頂き大変助かりました。又、ワークライフバランス支援センターの語学支援制度を利用して、女性だけの英会話教室を開催し、楽しく勉強する事ができて感謝しています。楽しい事ばかり書いて、リアルな「現状」が伝わってない気もしますが、女性医師は、ライフステージごとに抱えている問題も程度も色々であると思います。支援がなければ離職せざるを得ない難しい状況にある方も現実に存在します。私自身も未だに模索中で、このような原稿をかける立場でも無いのですが、今、困難に直面している女性医師へは、利用できる制度はどんどん利用して、時にはペースダウンしながらも、キャリアを諦めないで欲しいと願います。医療には女性の視点も必要です。一方、女子医学生や若い研修医達が将来に希望を持って学び働いている事は、私達女性医師への励みにもなります。

お困りの際は、鳥取県医師会の「しろうさぎ」さんまでご連絡を。