平成14年6月20日
平成14年度 No.1
目 次
Ⅰ 指導における指摘事項について
Ⅱ 特定疾患治療研究事業について
Ⅰ 保険指導における指摘事項について
平成13年度、鳥取社会保険事務局が実施した「保険医療機関個別指導」において指摘された事項をまとめてみましたので、今後の診療の参考にして下さい。
なお、末尾に 返還 と記した事項は、1年間の全患者について自主点検を行い、自主的に保険者に返還することが命じられたものです。
1.診療録の記載に係る事項
(1)複数の医師が一人の患者の診察にあたる場合は、記録の都度、署名または記名押印するなどにより、責任の所在を明確にすること。
(2)入院診療計画の説明に用いた文書は、その写しを診療録に貼付しておくこと。
(3)初診時の既往症及び主要症状等の診療録への記載が不十分なものが散見されたので、記載の充実に努めること。
(4)傷病名の終了年月日及び転帰欄について記載漏れが見受けられるので必ず記載すること。
(5)診療録の訂正は塗りつぶし等でなく、二本線で訂正し、訂正内容が判読できるように訂正すること。
(6)画像検査依頼書の徴取、保管管理に留意すること。
(7)診療録の記載内容に判読困難な例が見受けられたので、第三者にも判読できるよう丁寧な記載に努めること。
(8)診療録は保険請求の根拠であることを認識し、単なる診療の記録にとどめることなく、症状経過、診療行為及び内容等、必要事項の記載を十分行い、記載内容の充実を図ること。
(9)傷病名について多病化傾向が見受けられたので、病名の整理に留意すること。
(10)投薬処方について、診療録の頁が変わった場合は「do」表示ではなく、処方内容を改めて記載すること。また、診療録を更新した場合は、初診時からの経過概要を更新した診療録に記載すること。
(11)初診時の所見、診断根拠等診療録の記載が不十分なものが見受けられたので、より充実に努めること。また、傷病名について多病化傾向であり適宜整理を行うこと。
(12)診療録の記載で、所定欄以外の記載が見受けられたので留意すること。
(13)特定疾患療養指導料及び老人慢性疾患生活指導料を算定する場合は、厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対し、治療計画に基づき、当該主病に対する服薬・運動・栄養等の療養上の指導を行い、また、その指導内容の要点を診療録に記載した場合に算定することとなっているが、その記載した内容に希薄な部分が見られたので留意すること。
(14)同様病名及び病名漏れと思われるものが見受けられたので、病名の整理に留意すること。
(15)疑い病名が長期にわたり継続する例が見受けられたので、傷病の転記を適宜記載し、傷病名の整理に努めること。
(16)傷病名について、傷病名の記載漏れ、根拠に乏しい傷病名、いわゆるレセプト病名が見受けられた。レセプト病名を付けて保険請求することは、不適切なので改めること。
(17)疑い病名の多病化が見受けられるので、傷病の転帰を適宜記載し、傷病名の整理に努めること。
(18)傷病名の診療開始日について、両白内障の病名で初診の後、片眼だけの手術を行った場合には、他眼の初診日は、両白内障の初診日とすること。
(19)通院精神療法を行った場合はその要点を診療録に記載することとされているが、記載内容に希薄な部分がみられるので、留意すること。
(20)初診時及び症状経過に係る所見の記載が簡単すぎるので、改善すること。
(21)疑い病名が継続している例が見受けられた。また、傷病名の転帰を適宜記載し、傷病名の整理に努めること。
(22)検査に係る記録の記載の充実を図ること。
・細隙燈顕微鏡検査 ・精密眼底検査
(23)特定薬剤治療管理料を算定する場合は、薬剤の血中濃度、治療計画の要点を診療録に記載することとされているが、記載内容に希薄な部分がみられるので、留意すること。
(24)心理検査を行った場合は診療録に分析結果を記載することとされているが、記載内容に希薄な部分がみられるので、留意すること。
(25)「向精神薬の副作用の精査」等、病名でないものを傷病名欄に記載しているものがみられるので、留意すること。
(26)診療録への記載が不十分なものが散見されたので、記載の充実に努めること。
・初診時の自覚症状及び他覚所見
・通院精神療法を行った場合のその要点
・症状の経過
(27)診療録第1面の「傷病名」等は、1病名に対し1欄を使用して所定の位置に記載すること。
(28)診療録第1面の「転帰」欄の記載が不十分であるので、必要な事項の記載を行い傷病名の整理を行うこと。
(29)再診時の自覚症状・他覚症状の記載について、不十分な例が見受けられたので、記載内容の充実を図ること。
(30)両側器官に関わる処置について、傷病名に「両側」の記載漏れが見受けられたので留意すること。
(31)診療録に余白部分が散見されたが、行間を空けることなく記載するよう留意すること。
(32)受給資格の確認として保険証の確認を行った場合は、確認した旨を診療録に記載しておくこと。
2.診療内容に係る事項
(1)言語療法の算定に当たっては、算定要件に十分留意すること。
(2)ビタミン剤の投与について適応外の例が見受けられたので留意すること。
(3)AFP精密測定検査については、検査回数に留意すること。
(4)注射に当たっては、同一の注射を漫然と継続することなく、症状の経過や検査結果等に応じて行うよう留意すること。
・消炎鎮痛を目的とした関節腔内注射(アルツディスポ、アドマック注)
・慢性期の骨粗鬆症の患者に対するラスカルトン注
(5)症状に対する傷病名の記載には、十分留意すること。
(6)検査の実施については、必要性を熟慮し実施すること。
(7)注射について、長期漫然と注射回数の多いものが散見されたので、その必要性について留意すること。
(8)検査について、過剰な類似検査の連月実施が見受けられたので、検査項目・回数等は画一的でなく、必要なものについてのみ行うよう留意すること。
(9)検査は、自覚症状・他覚所見から必要な検査項目を選択し、段階を踏んで実施すること。
・心疾患患者に対する超音波検査
・セット検査的に行われている血液化学検査
(10)点滴注射に当たっては、漫然と継続することなく、症状の経過や検査結果に応じて行うよう留意すること。
(11)処置・検査等に過剰の傾向があるので、適正量等について再考すること。
(12)症状に応じ、適正な受診指導及び治療に努めること。
(13)検査の実施については症状等を考慮し、必要な検査を実施すること。
・初診時の濃厚検査
・同じ検査を毎月実施
・胸部レントゲン検査、心電図検査未実施での、ホルター型心電図検査
・胃レントゲン検査と胃内視鏡検査の併用
・胃癌、大腸癌のフォロー検査等
(14)検査の結果に基づき、必要な治療を実施すること。
・ヘリコバスター検査陽性
(15)注射にあたっては、薬事法承認事項を遵守すること。
(16)検査は自覚症状、他覚的所見から必要な検査項目を選択し、段階を踏んで実施することとし、検査項目・回数は治療方針に的確に反映される範囲でならないこととなっているが、必要性の乏しい検査実施例が見受けられたので留意すること。
(17)診療根拠の薄い傷病名が見受けられたので、医学的に妥当適切であるよう留意すること。
・胃炎、腸炎等
(18)投薬・注射にあたっては、薬事法承認事項を遵守すること。
(19)以下のような不適切な投薬・注射例が見受けられた。 返還
・気管支喘息の発作に対するプリドール125㎎
・術後患者に対するフルマリン静注用1gの長期間投与
・適応外使用のセレネース注射液0.5%1ml
(20)検査は、自覚症状・他覚所見から必要な検査項目を選択し、段階を踏んで実施すること。
・C型肝炎疑い病名でのHCV核酸同定検査(PCR法)の算定 返還
(21)検査回数は必要最小限の回数で実施すること。
・複数回手術時にABO血液型、HBs抗原精密測定、HCV抗体価精密測定検査の重複
返還
(22)理学療法において複雑と簡単なものが2ヶ月以上に渡り混在している例が見受けられた。理学療法は患者の症状に合せた計画に基づいて行うこと。
(23)薬剤の長期投与は、30日又は90日投与が認められる内服薬と疾患等に留意して投与すること。
(24)傷病名から見て、整合性の乏しい投薬・注射例が見受けられたので留意すること。
(25)治療の実態がなく、検査値により疾患が否定される病名(糖尿病)について漫然と検査を継続しないこと。 返還
(26)セット検査を疑わせるものがあるので、必要な検査項目の選択に留意すること。
(27)甲状腺機能検査が過剰傾向にあるので、留意すること。
(28)処方せんの発行回数が多い傾向があるので、留意すること。
(29)特定薬剤治療管理加算の算定に当っては、算定基準に留意すること。
(30)抗生剤等の多剤併用・長期投与の傾向が見受けられるので、留意して使用すること。
(31)心理検査の回数が多い傾向がみられるので、留意すること。
(32)血液検査、尿検査は真に必要な検査項目を選択して行うよう留意すること。
(33)傷病名に対して、必要性の乏しい理学療法(複雑)を行っている例が見受けられたので、患者の症状に合わせた理学療法を行うこと。
(34)投薬にあたっては、薬事法承認事項を遵守すること。 返還
・サノレックス錠
(35)治療実態もなく、検査値より疾患が認められないにも拘らず、漫然と検査を実施している事例が見られたので留意すること。 返還
(36)抗生剤の長期投与の傾向が見受けられるので、投与期間に留意して使用すること。
(37)外用薬の投与に過剰傾向が認められたので留意すること。
3.一般事務に係る事項
(1)受給資格の確認は、確認した旨を診療録の余白等を利用して記録すること。
(2)受給資格の確認は、初診時のほか、再診時においても行い、診療録に標示すること。
(3)保険医療機関の届出事項に変更があった場合は、その都度速やかに鳥取社会保険事務局へ変更・異動届を提出すること。
・診療時間
・保険医の採用・退職など
4.診療報酬の請求に係る事項
(1)レセプトの転帰欄の記載漏れが見受けられるので、提出前の点検を十分行うこと。
(2)訪問看護指示料は、月1回を限度として算定するものであるが、複数回算定されている例が認められた。 返還
(3)寝たきり老人在宅総合診療料は、投薬の費用は所定点数に含まれるが、薬剤料を算定している例が認められた。
・エンシュア・リキッドの経口投与 返還
(4)同月中に保険種別等の変更があった場合には、その変更があった日を診療開始日として記載し、摘要欄にその旨を記載すること。
(5)診療録とレセプトの傷病名の不一致が見受けられたので、保険医によるレセプトの点検を十分行うこと。
(6)投与期間の定められている薬剤等を投与する場合は、投与開始年月日を摘要欄に記載すること。
(7)往診は患家の求めに応じて患家に赴き診療を行った場合に算定できるものであり、定期的ないし計画的に患家に赴いて診療を行った場合は、在宅患者訪問診療料等で算定すること。
(8)入院中の患者に対しては、てんかん指導料が算定できないにもかかわらず算定している例がある。 返還
(9)通常使用する薬剤量を超えて薬剤を使用した場合は、症状詳記等を付記すること。
・膀胱洗浄に生理食塩液 500ml 6瓶使用
(10)域値の不明なもの(測定法)は、精密視野検査で請求すること。
(11)診療録の点数欄には、月計を記載し、余白欄に請求済みの表示を行い、重複請求防止に努めること。
(12)特定疾患処方管理加算は、厚生労働大臣が定めた疾患を主病とする患者に対して処方せんを交付した場合に算定できるが、対象病名が診療報酬明細書に記載されていない例が認められた。 返還
(13)不適切に請求された手術の例が認められた。
・皮膚切開術を行ったものを瘭疽手術として算定 返還
Ⅱ 特定疾患治療研究事業について
都道府県医師会長 あて
日医発第271号 14.5.31
日本医師会長 坪井栄孝
時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、厚生労働省では、平成14年6月1日から特定疾患治療研究事業の対象疾患等を下記のとおり、追加及び整理・統合し、特定疾患治療研究事業実施要綱のとおり実施することになったとして、厚生労働省健康局疾病対策課長より、各都道府県衛生主管部(局)長あて通知がなされ、本会に対しても厚生労働省健康局長よりその円滑な実施について、協力方の要請がありました。
つきましては、本事業の重要性に鑑み、従来通りご協力いただきますよう貴職のご高配をお願い申し上げます。
記
1.改正概要
(1)対象疾患の追加
新たに「ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病」及び「致死性家族性不眠症」が対象疾患に追加されたこと。
(2)対象疾患の整理・統合
ア 新たに追加された2疾患とクロイツフェルト・ヤコブ病が整理・統合され、「プリオン病」とされたこと。
イ ライソゾーム病とファブリー(Fabry)病が整理・統合され、「ライソゾーム病(ファブリー[Fabry]病含む)」とされたこと。
(3)対象疾患の名称変更
「ウィリス動脈輪閉塞症」については「モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)」と、「ハンチントン舞踏病」については「ハンチントン病」へそれぞれ名称変更が行なわれたこと。
(4)対象疾患と障害の一覧表の変更
原発性肺高血圧症の二次的病態によるものとして、心疾患を加えたこと。
2.留意事項
(1)平成14年5月31日までに交付した医療受給者証に記載されている疾患名については、平成14年6月1日以降、クロイツフェルト・ヤコブ病にあってはプリオン病、ライソゾーム病又はファブリー(Fabry)病にあってはライソゾーム病(ファブリー[Fabry]病含む)、ハンチントン舞踏病にあってはハンチントン病、ウィリス動脈輪閉塞症にあってはモヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)と、それぞれ読み替えるものとすることにより、医療受給者証の書き換え又は再発行は要しないものとすること。
(2)交付申請等各種様式についても(1)と同様に読み替えるものとし、再提出を要しないものとすること。
【県医注】厚生労働省健康局長の文書は省略します。対象疾患は次の一覧表のとおりです。
特定疾患治療研究の対象疾患一覧
疾病番号 |
疾 病 名 |
1 |
ベーチェット病 |
2 |
多発性硬化症 |
3 |
重症筋無力症 |
4 |
全身性エリテマトーデス |
5 |
スモン |
6 |
再生不良性貧血 |
7 |
サルコイドーシス |
8 |
筋萎縮性側索硬化症 |
9 |
強皮症、皮膚筋炎及び多発性筋炎 |
10 |
特発性血小板減少性紫斑病 |
11 |
結節性動脈周囲炎 |
12 |
潰瘍性大腸炎 |
13 |
大動脈炎症候群 |
14 |
ビュルガー病 |
15 |
天疱瘡 |
16 |
脊髄小脳変性症 |
17 |
クローン病 |
18 |
難治性の肝炎のうち劇症肝炎 |
19 |
悪性関節リウマチ |
20 |
パーキンソン病 |
21 |
アミロイドーシス |
22 |
後縦靱帯骨化症 |
23 |
ハンチントン病 |
24 |
モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症) |
25 |
ウェゲナー肉芽腫症 |
26 |
特発性拡張型(うっ血型)心筋症 |
27 |
シャイ・ドレーガー症候群 |
28 |
表皮水痘症(接合部型及び栄養障害型) |
29 |
膿疱性乾癬 |
30 |
広範脊柱管狭窄症 |
31 |
原発性胆汁性肝硬変 |
32 |
重症急性膵炎 |
33 |
特発性大腿骨頭壊死症 |
34 |
混合性結合組織病 |
35 |
原発性免疫不全症候群 |
36 |
特発性間質性肺炎 |
37 |
網膜色素変性症 |
38 |
プリオン病 |
39 |
原発性肺高血圧症 |
40 |
神経線維腫症 |
41 |
亜急性硬化性全脳炎 |
42 |
バッド・キアり(Budd-Chiari)症候群 |
43 |
特発性慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型) |
44 |
ライソゾーム病(ファブリー[Fabry]病含む) |
45 |
副腎白質ジストロフィー |