健康ア・ラ・カルト

【22)くすりの話等】  2)狭心症の薬、早期の効果が不十分

質問

53歳男性。昨年来明け方に胸が苦しくなり、狭心症と診断されました。病院で冠動脈造影を受けましたが、血管のけいれんで、閉塞(へいそく)はないと言われました。Ca拮抗(きっこう)剤を朝夕服用しますが、やはり朝早く胸苦しさが起こります。私は夕食が5時。30分後服薬し9時に就寝します。たばこもやめました。なにが問題でしょうか。

回答

◎薬の効果は血中濃度とともに弱まる

狭心症には動脈硬化で心臓に酸素や栄養を送る冠動脈に狭い部分(狭窄=さく)ができ発症するものと、相談者のように夜中や早朝に、冠動脈の一部が一時的にけいれんし症状が出るものがあります。狭窄はないのでフーセンで広げる治療はできず、薬でけいれんを予防することが必要です。Ca拮抗剤が特効薬で、非常にたくさんの種類があります。

一般に薬は服用後小腸で吸収され、血液中の薬の濃度が上昇すると効き目を現しますが、胆汁や尿に排せつされて濃度が下がると効き目もなくなります。(実際は効き目が濃度よりやや遅れて上下します)ある一定の濃度以上が続く時間つまり効き目の持続時間は、薬により数時間から24時間以上とさまざまです。

そこで発作の起きる時間に十分な効き目が出る血中濃度にしてやる工夫が必要です。薬の名前がわかると良いのですが、もし朝夕2回服薬の理由が、効き目が半日の薬だからとすれば、夕食後の服薬から発作まで12時間近く経っており、効き目が弱くなっていると考えられます(図)。

まず夕の服薬を就寝前の9時ごろにずらしてもよいか主治医に相談してみてください。この4時間の差は大きいと思います。ただ薬によっては食後と空腹時で吸収に差が出る場合がありますので勝手な判断は禁物です。

そのほか、効き目のピークの遅い長時間作用の薬への変更や、薬の増量も効果がなければ、長時間作用性の硝酸薬(ニトロ製剤)など、はたらきの異なる薬剤を併用することになります。しかしこれらは主治医の総合判断によりなされるものです。

(鳥取大学医学部臨床薬理学・長谷川純一)