健康ア・ラ・カルト

【20)女性の健康問題 等】  1)卵巣のはれもの

質問

29歳、主婦。子供は3人です。産後しばらくして産婦人科に行ったとき、卵巣に水がたまっていると言われました。すぐの入院は無理と相談したところ、しばらくは大丈夫だが、そのうち痛みがくると言われました。以来6年、強く押さえない限り痛みはありませんが、側臥(が)位をとると下腹部がぽっこりふくらんでいます。前は左下腹部だけだったのに、今は中央に前より大きくふくらんでいます。手術が必要でしょうか。怖くてなかなか病院へいく勇気がでません。

回答

◎真性の腫瘍なら手術が原則

結論から言えば、早期受診の一語に尽きます。

お手紙より推察すれば良性の卵巣嚢腫(のうしゅ)で、自分でおなかが膨らんでいるのが分かるくらいなら握りこぶしの大きさになっているのかもしれません。卵巣なら茎の部分がねじれて緊急手術が必要になることもあります。また、「良性」とはいったものの手術の前に悪性を完全に否定することは不可能であるとも言われています。ともかくもまず診察をうけることが必要でしょう。

診断にあたって、骨盤の中の腫瘤(しゅりゅう)が卵巣なのか子宮筋腫(きんしゅ)か、単なる脂肪かを区別をします。次に、卵巣なら「かたまり」が「できもの(腫瘍)=しゅよう=」なのか非腫瘍性の病変(卵胞の嚢胞、黄体嚢胞など)なのか、良性か、悪性かを手順に従って鑑別してゆきます。最終的には真性の腫瘍と決まれば手術が原則ですが、良性なら手術は容易です。

画像診断が進歩して、超音波断層診断法で腫瘍の内容がかなり分かるようになりましたし、腫瘍マーカーという血液検査で、悪性か否かについて、ある程度の判断が可能となりました。骨盤の中の腫瘤の特徴は、臓器に直達する検査手段がないので診断がしにくいこと、卵巣には、善玉悪玉あるいは、その中間など多種多様の腫瘍が発生するので診断治療も腫瘍の種類それぞれにより、考えなければならないこと、腹腔(ふくこう)内にあるので悪性のとき、他臓器に転移しやすいこと、ホルモンを出す臓器なので年齢などを考慮して方針をたてなければならないなど、いろいろの問題点があることを参考までに付記します。

(県医師会・長田昭夫)