毎年肝臓の検査を受けており、いつも異常がありませんでした。しかし、昨年10月の検査でC型肝炎の抗体が陽性であることが分かりました。先生は心配ないと言われましたが、肝硬変や肝癌(がん)になるのではないかと不安で、夜も眠れません。このウイルスを治すことはできないのでしょうか。また、感染や予防についても教えて下さい。
◎C型肝炎ウイルスに感染
C型肝炎ウイルスは肝臓を特異的に侵すウイルスで、日本の肝臓病の6~7割にみられます。このウイルスは主に血液を介して感染しますが、慢性化しやすく、一定の割合で慢性肝炎、肝硬変、さらに肝癌へと進展します。
近年、C型肝炎に対する認識が高まるにつれて、献血、住民検診、職場検診、病院などでC型肝炎ウイルスの抗体が測定されるようになり、質問者のように、抗体が陽性であると言われて驚かれる人が増えています。
C型肝炎の抗体が陽性であれば、C型肝炎ウイルスに感染したことを意味します。しかし、抗体陽性者のおよそ3割は血液中にウイルスが無く、治った人です。このため、抗体が陽性の人は血液中のウイルスを測定して、心配ないか否かを決めてもらう必要があります。
一方、血液中にウイルスがいれば、真の感染者です。この場合は、肝機能検査や肝組織検査によって、現在肝臓がどれくらい悪くなっているかを知ることが大切です。たとえば、軽い慢性肝炎の人では10年間に肝癌になる割合は5%ですが、中等度および高度の慢性肝炎では15%、30%に上昇します。
質問者の場合は、たとえ真の感染者であっても、肝機能検査が長い間正常であるので、先生が言われるように心配ないと思います。
C型肝炎ウイルスに対する治療は、現在のところインターフェロンしかありません。インターフェロンで治療した患者さんの3~4割の人がウイルスが無くなり、完治します。さらに、残りの人も治療を受けなかった人に比べて、肝癌の発生が3分の1に抑えられます。
C型肝炎ウイルスは主に輸血、血液製剤、汚染された医療器具などで感染しましたが、現在は予防対策がとられ安全です。また、血液中のウイルス量は非常に少ないので、食器、食べ物、入浴など日常生活での感染は心配いりません。
(鳥取大学医学部第二内科・周防武昭)