健康ア・ラ・カルト

【15)皮膚 等】  9)小麦アレルギー

質問

63歳の男性。5年ほど前からじんましんが度々、ひどいときには全身に出ます。昨年皮膚科を受診し、採血検査で「小麦アレルギー」と言われました。パン、そうめん、うどん、お菓子、たこやき、たいやきなど小麦粉の入ったものを食べると、20分もすると、顔、耳の順にかゆくなり、最後には体中がこっぱんだらけになります。唇も変形して腫(は)れ上がります。最近は小麦粉の入ったものは一切口にしないようにしていますが、なんとか良い方法はないでしょうか。

回答

◎じんましん

じんましんの原因はさまざまです。この方のように食餌(じ)アレルギーの場合もありますが、むしろ少なく、原因がはっきりしない場合の方が大半です。精神的、肉体的疲労がじんましんを誘発する場合が多いようです。

さて、お困りの小麦アレルギーによるじんましんですが、結論から言えば、小麦製品を食べないというのが最良の予防であり、治療法であると言わざるを得ません。〝身も蓋(ふた)もない〟とおっしゃるかもしれません。人間にとって異物(抗原)が体内に入ると、それに対して抗体を作り防御しようとする働きがあります。それが有益の場合は、免疫と呼ばれます。

例えば風疹(ふうしん)とか麻疹(ましん)は、一度かかると二度とかかりませんよね。しかし、人間にとって有害に働く場合があります。これがアレルギーです。免疫にしてもアレルギーにしても基本的には同じもので、それらから免れえませんので、小麦製品を摂取しないのが最善であるということがご理解いただけましたでしょうか。

それでは治療方法は全く皆無かといいますと、ゼロとは言い切れないものがあります。ある種の抗アレルギー剤の内服が食餌アレルギーに効果があると言われます。ただ、絶対的ではありません。しかし、内服治療をされてみる価値はあると思います。

また、小麦がアレルギーのもとと分かっていますので、減感作療法を行ってみるのも方法としてはあります。小麦から抽出した成分を極めて薄い濃度から注射し、少しずつ濃度を濃くしていって身体に慣れを生じさせようという方法です。根気のいる治療の割には効果が今一つあがらず、またじんましんを誘発させる危険性もありますので、日常好んでされる治療ではありません。しかし、小麦の摂取を制限されるつらさも大変なものがありますので、受診された先の医師と十分相談してみて下さい。

最後に、じんましんが出た時、発疹だけではなく腸管に出て下痢を生じる場合もあります。息苦しさを感じることもあります。空気の通る声門部にじんましんが出ている兆候です。危険な場合がありますので、息苦しさを感じた時にはすぐ医療機関で受診して下さい。

(鳥取県立中央病院皮膚科・川口俊夫)