健康ア・ラ・カルト

【13)がん】  5)食道びらんの良悪判断

質問

80歳、男性。2年ほど前の胃がん検査で、食道びらんとのことで組織を取られた結果、がんに関係するものもなく、手術も今のところ必要ないが、3、4カ月に1回検査を受け(組織を取り)、様子を見ようとの事でした。今まで治療もなく、薬も出ていません(薬はないとのことでした)。はじめから現在まで、何の自覚症状もなく元気で暮らしていますが、このまま指示通りでよいでしょうか。

回答

◎経過観察が重要

食道びらんについてのお尋ねですが、この「びらん」とは、専門的に言えば粘膜の欠損のことで、一番浅い潰瘍をさしたものです。その原因は、胃酸の逆流による食道炎が一番多いのですが、薬によるもの、強いお酒(蒸留酒)を飲んだ後、熱い食べ物を食べた後、かたい食べ物で傷付いたり、感染症と関連したもの、そしてがんの初期像があげられます。

今回ご質問の「びらん」が食道のどこにあって、1カ所なのか、数カ所なのか分かりませんが、経過を観察することが良悪を判断する上では大変重要です。つまり、(1)孤立したものは悪性を疑って診断をすすめる(2)良性に比較して悪性のものは病巣が多彩である(3)悪性の所見は短期間は比較的安定しており、良性の病変は変化(治癒機転がはたらくため)する―という原則があるからです。

もう一つ重要なことは、1回の組織診断が良性だからと言って悪性を否定する根拠にはならないこと、良性の「びらん」でも再生異型(さいせいいけい)といって、粘膜が修復するときに細胞分裂が盛んに起こり、その組織が悪性と区別がつき難いことがあげられます。

特にご質問の方は症状がないということなので、主治医の先生が悪性の「びらん」を見落としてはならないということで定期的な経過観察を指示されたものと考えます。今後の変化によっては定期検査の間隔も延びると考えますし、もし仮に、組織検査で悪性と出てもごくごく早期のものでしょうから、内視鏡で切除でき、手術になることはないと考えます。

(鳥取県立中央病院内科・秋藤洋一)