健康ア・ラ・カルト

【17)眼】  5)飛蚊症

質問

44歳の女性。今年7月から読書中にゴミのような物が見え、8月に受診し、飛蚊症と言われました。心配はないとの事で、現在は病院から出された目薬をさしていますが、目の疲れや、時々の痛みもとれず、最初は片目だけだったのが、今は両目にモヤモヤしたものが飛んで見えます。このまま悪化するとどうなるのでしょうか?また糖尿病や高血圧ではありませんが、コレステロールが高い(260)のは、関係ありますか?病院によって瞳孔(どうこう)を目薬で開いて眼底の検査をされる所もあるようですが、そこまでしなくても暗室でライトをあててみる事で眼底出血は、わかりますでしょうか。

回答

◎眼底検査が必要

小さな虫が目の前を飛んでいるかのように見えるので飛蚊症と呼びます。「糸くずのようなもの」とか「小さな泡つぶ」などと表現される方もあります。

眼球の内側には硝子(しょうし)体というドロドロした透明な液体が詰まっています。この部分に小さな濁りがあるとその影がゆらゆらと動いて見えるわけです。原因にはいろいろありますが、非病的で心配のないもの(治療の必要がないもの)と病的なもの(治療が必要なもの)とに大別されます。

硝子体は年齢と共に徐々に混濁を生じやすくなるので、飛蚊症を訴える人も中年ごろから多くなってきますが、ほとんどは生理的な老化現象で、目が見えなくなるとか他の病気の前ぶれなどという心配はありません。ただし目薬でこの濁りをなくすことはできず気休めにしかなりません。

病的なものには網膜剥離(はくり)と硝子体出血とがあり、どちらもたいへんこわい病気です。網膜剥離は放置すると失明の確率が高いので初期に見つけてレーザー光線等による治療が必要です。また硝子体出血は糖尿病の治療をきちんと続けていなかった人におきやすく、突然「墨ながし」のようなものが見えてきます。この時にはすでにかなり進行した網膜症と考えて間違いありません。

病的なものであれ、非病的なものであれ、飛蚊症に痛みは伴いません。コレステロールとも無関係です。目の疲れや痛みというのは気分的なものか、あるいは年齢からみて老眼がはじまってきたためではないかと思われます。

飛蚊症を訴える人の90%以上は「心配ないもの」ですが、残り数%の「こわい病気」の人を見落とさないためには、散瞳薬を用いての詳しい眼底検査が必要不可欠です。

(鳥取赤十字病院眼科・恩田健史)