健康ア・ラ・カルト

【14)骨・関節・筋肉】  4)頚椎椎間板ヘルニア

質問

54歳、女性(事務職)です。約1年前に右手から肩にかけて痛みとシビレを感じ、整形外科、整骨院で牽(けん)引、温熱治療を行い、4カ月ほどで症状はとれました。今年の夏に再び右手(ひとさし指)、腕、背中、頚(くび)に激痛が起こり、ペンも持ちにくくなりました。治療により現在、シビレは多少和らぎましたが、右肩、頚の痛みはとれません。11月末にMRIをとり、第5/第6頚椎(けいつい)椎間板ヘルニアと診断されました。痛みと戦うか、手術かの選択とのことですが、場所が場所だけに苦慮しています。

回答

◎まず入院治療

お話を伺いますと、第5/第6頚椎椎間板が右後側方に突出して(これを椎間板ヘルニアと言います)神経根を圧迫し、現在の症状が起こっているようです。頚椎椎間板ヘルニアの症状は、圧迫される神経が脊髄(せきずい)であれば脊髄症(脊髄障害)、神経根であれば神経根症と呼びます。脊髄は木の幹、神経根は木の枝と考えると分かりやすいと思います。

脊髄症が起こっている場合は症状が重く、頚や上肢の症状だけでなく下肢の知覚・運動障害、膀胱(ぼうこう)障害が起こります。この場合は保存的治療(手術以外の治療)で症状が改善しなければ、手術を早急にした方が良いでしょう。

神経根症の場合は頚・上肢・肩のまわりの痛み、シビレ(知覚障害)、筋力低下などが起こりますが、一般的には保存的治療で症状はとれます。しかしながら保存的治療でも症状がとれず、長期にわたり苦痛を強いられる場合には手術をする方が良いでしょう。

保存的治療としては安静臥床、(入院のうえグリソン牽引、頚椎ソフトカラーによる固定)、温熱療法、牽引療法(通院で行う間歇牽引、入院して行う持続牽引)、薬物療法(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤など)、注射療法(神経根症に対して硬膜外ブロックを行う)などがあります。

手術療法としては脱出、あるいは突出した椎間板を除去して神経の圧迫をとり、その後、その椎間板腔(くう)に骨を移植して安定化(固定)することを行います。

ご質問された方は、おそらくヘルニアによる神経根症と考えられます。手術をすべきかどうかお迷いとのことですが、まず入院されて安静臥床、持続牽引、持続硬膜外ブロックなどを3週間ほど受けられ、それでも楽にならなければ手術をお受けになることをお勧めします。どのような手術でも人間のすることで絶対に安全とはいえませんが、頚椎椎間板ヘルニアの手術は経験のある整形外科では比較的安全に行われています。

(鳥取大学医学部整形外科・森尾泰夫)