健康ア・ラ・カルト

【1)加齢と病気】  4)脳の若さを維持するには

質問

52歳、女性。脳ドックを受けたら軽度の脳萎縮(いしゅく)があると言われました。年齢的にありうるのか、今後どうなるのか知りたい。

回答

◎血管系の老化予防を

40歳代になると記憶力の低下を自覚し、50歳代になると、よく知っている人の名前が出てこないということはだれしも経験するところです。昔の人は40歳を初老としていました。

最近はMRIなどの画像診断が進歩して脳の形態を詳しく見ることができるようになりましたが、それによりますと脳の萎縮は45歳ごろから始まり、60歳を過ぎるとかなり加速されることが分かってきました。ですから50歳を過ぎれば、多少の脳の萎縮があったとしても異常とは言えません。また脳の重量や形態だけで安易に脳の機能の衰えがあるとか、知能の善し悪しは判断できません。脳は無限の可能性を秘めていますが、まだまだブラックボックスであり、老化一つについても本当のところはよく分かっていません。

実際には脳をどう健常に保つかを考えて行く必要があります。まず脳の障害をもたらす血管系の老化を予防することです。喫煙や多量の飲酒、肥満に注意し、適度の運動と、バランスのとれた食生活に気を配るなど、生活習慣に注意することです。心身のストレスも老化を進めます。

脳の神経細胞はいったん障害を受けると再生できないと言われてきましたが、今は、ある程度の再生や修復が行われることが分かってきました。心と体とは相互に深くかかわりあっており、何か自分の役割を持って仕事をする、人に役立つことをする、感謝の気持ちをもって働く、人とのよい関係を築き、平穏なこころでいる、生活や仕事の中で喜びや感動する、そのようなことが脳を活性化します。いつまでも進取の気象を失わないで積極的に生きて行くことが脳を衰えさせないよい方法かと思います。

(国立療養所西鳥取病院院長・北川達也)