健康ア・ラ・カルト

【15)皮膚 等】  4)ホクロ

質問

ご近所に、足の裏のホクロががんになり通院治療中の方があり、ホクロも怖いと思いました。そこで以前より気になっていた4歳の娘の足の指のホクロを皮膚科で切ってもらいました。結果は「ただのホクロ」で安心しました。ところがその後、家族の体のところどころに、いままではなかったホクロを見つけ心配になりました。ホクロとはいったい何なのでしょうか。一部のものは昨日はなかったと思いますが、突然できるものでしょうか。また心配のないホクロと心配なホクロについて教えてください。

回答

◎悪性黒色腫に注意

ホクロとは、比較的小型の黒褐色調の色素斑(はん)ないし小腫瘤(しゅりゅう)を指す俗語です。医学的にいうと色素性母斑とか、それに類するものをいいます。ここで問題となっているホクロが本当に色素性母斑類かどうかはわかりませんが、その前提で話を進めたいと思います。

色素性母斑はメラニン色素を作る色素細胞系の細胞が皮膚のなかで増殖して生じるもので、組織奇形と考えてください。この色素性母斑は出生時には少なく、2~6歳のあいだに出現し、小児期に漸増、思春期に急増し、中年以降では横ばいかむしろ減少します。突然できたということですが、色素性母斑にせよ、以下に述べる悪性黒色腫にせよ、細胞が増殖する時間が必要なため、一晩のあいだに突然現われるとは考えにくく、そのとき気づかれたのだと思いますがいかがでしょうか。

さて黒色調の腫瘍(しゅよう)のなかに、悪性黒色腫という悪性度のきわめて高い悪性腫瘍があります。俗にホクロのがんと呼ばれているものです。その一部は色素性母斑から生じるとされています。ホクロと思っていたものが実は悪性黒色腫の初期病変という可能性があります。この悪性黒色腫は全身皮膚のどこにでもできますが、日本人の場合、足の裏(指も含む)、ついで手に最もよく生じます。足の裏のホクロに注意といわれるのはこのためです。むろんこういったものであれば、ただちに切除手術が必要ですが、可能性があるからといってすべての色素性母斑を切除することは、大多数をしめる良性のものには不必要ですし、足の裏に限っても日本人の約3%にホクロがあるというデータもあり実行不可能でしょう。

数カ月、数年の単位で持続的に増大し、隆起する、周辺への黒色色素のしみだしがある。濃淡の色むらが強い、形や表面、辺縁の不整、出血する、時にかゆくなる、等の徴候があれば、特に成人になってから生じたものであれば、悪性の可能性があり専門医に相談してください。先に述べたように中年以降に新しいホクロができることはむしろまれなことです。なお足の裏で成人以後に新たに気づいた最大径6ミリメートル以上のホクロがあれば、必ず受診してください。

(東部医師会員・神戸直登)