健康ア・ラ・カルト

【13)がん】  3)肺癌について知ってほしい

日本の肺癌(がん)死亡数はこの半世紀に約40倍と急増し、1990年には全死亡の4.4%、全癌の16.8%を占めるに至り、1993年には胃癌を追い抜いて癌死亡のトップとなりました。

人口10万人あたりの死亡率(年齢補正)も1994年には男47人、女12人と約10倍も増加しています。1994年には44,000人が肺癌で死亡していますが、男性が32,000人(73%)を占め、男性の約5~6%が生涯中に肺癌になる計算になります。

この急増の原因は「たばこ」です。肺癌の3分の2は、たばこが原因とされています。20本以上の喫煙により、肺癌の危険率は5~30倍になります。周囲の人も被害を受けます。喫煙者の妻の肺癌死亡率は、非喫煙者の妻の約2倍です。

たばこは他の癌とも密接な関係があります。例えば、喫煙による喉頭(こうとう)癌の危険率は、なんと77倍も増加します。さらに、たばこは癌以外にも心筋梗塞(こうそく)、胃潰瘍(かいよう)、気管支炎などを引き起こします。

もはや「喫煙は罪悪」と呼ばれる時代になっているのです。やっと日本でもたばこの害が認知されるようになりましたが、欧米に比べるとまだまだ不十分です。

それでは、どうしたら良いのでしょう。まず、たばこを吸う方は、自分のためにも家族や同僚のためにも、たばこをやめましょう。せめて本数を減らし、喫煙場所で吸いましょう。うれしいことに、10年程の禁煙で、肺癌危険率は非喫煙者程度に低下しますし、減煙でも効果は期待できます。青少年の喫煙防止も大切です。喫煙開始年齢が低いと、肺癌の危険がさらに高まります。

また、販売方法を含めた社会変革が必要で、禁煙思想を社会に広く浸透させることが重要です。学校教育も大切ですが、家庭内で「喫煙の害」を子供たちに伝えて頂きたいものです。

肺癌の予防は、まず「たばこは吸わない・やめる」です。

さて、今回は肺癌の早期発見・早期治療のお話です。肺癌の治療成績は、ほかの癌に比べ不良です。癌医療の進歩した今日でも、肺癌患者さんの約80%は診断5年後には死亡しています。せっかく肺癌を見つけても、その半分は手術不可能ですし、肺癌の手術成績が年々向上しているにもかかわらず、その約60%が死亡しています。

進行肺癌がまだまだ多い上、大部分の肺癌では抗癌剤や放射線があまり効かないのです。そうなると、肺癌は早く見つけて、早く手術するしかありませんね。うれしいことに、転移のない肺癌では手術後5年生存率は70%程度になっていますし、早期肺癌のそれは80%を超えています。早期肺癌とは、直径2センチ以下、あるいは気管支に限局する肺癌です。

肺癌に限らず、癌は症状が出てからでは手遅れになりがちです。となると、早期発見のかなめは検診ですね。検診で発見された肺癌の5年生存率は、症状が出て医療機関にかかった肺癌に比し、約20%高くなります。

肺癌検診では、X線検査(対象・40歳以上全員)と喀痰(かくたん)検査(対象・肺癌になりやすい人)を毎年行っています。肺癌になりやすい人とは、(1)50歳以上で喫煙指数(1日本数×年数)が600以上の人(2)40歳以上で過去6カ月以内に血痰のあった人(3)アスベスト、クロム、ニッケル、ひ素、ビスエーテル、タール、ラドン、マスタードガスを扱う職業の人です。

思い当たる人は、これを機会に検診を受けましょう。また、そうでない人も癌年齢に達したら定期的検診をお勧めします。

(鳥取県立中央病院検査科・中本 周)