健康ア・ラ・カルト

【16)耳・鼻・のど】  2)耳鳴り

質問

半年前、急に右耳が痛くなり、その後耳鳴りに気付きました。聴力検査では2000ヘルツだけが低下していました。治療を受け、現在は聴力は正常になっていますが、耳鳴りが気になります。

回答

◎治療で聴力低下は回復

耳鳴りの原因には、耳の障害に伴う耳鳴り、高血圧や糖尿病などの全身疾患に伴う耳鳴り、薬物の副作用による、耳鳴りなどがあります。また、健康な人でも静かな場所では耳鳴りが聞こえ、これを無音響性耳鳴といいます。

今回の場合、耳鳴りに気付く前に耳痛があったこと、その後の聴力検査で2000ヘルツの聴力低下があったことから、耳の障害に伴う耳鳴りが疑われます。

では、どのような耳の障害なのかが問題となりますが、2000ヘルツだけが低下する疾患としては耳硬化症があげられます。この病気は白人の女性に多く、日本人には少ない病気で、鼓膜の振動を内耳に伝える耳小骨という三つの骨の動きが悪くなるために聴力が低下し、手術以外では治療は困難です。

しかしあなたの場合、薬物による治療を受けて聴力が改善していることから耳硬化症は考えにくく、また脳波検査やエックス線検査で異常がないことから、聴神経腫瘍(しゅよう)などの中枢性疾患も否定的です。最も疑われる疾患は突発性難聴といって、突然に原因不明の難聴をきたす疾患で、難聴のほかに耳鳴りやめまいを伴うことがあります。

耳鳴りの治療としては耳鳴りの原因となる疾患を治療すればよいのですが、実際には原因が分からないことも少なくありません。この場合は対症的に耳鳴りを治療することになり、現在さまざまな治療法が行われています。

最も大切なことは、耳鳴りの陰に重篤な病気が隠されていることがあり、それを見逃がさないことです。耳鳴りが持続したり増強する場合には、もう一度専門医の診察を受けられることをお勧めします。

(鳥取大学医学部耳鼻咽喉科・竹内裕美)