82歳、女性。口の中が痛みます。昼間は気がまぎれてそれほどでもありませんが、夜が痛くて眠れません。唐辛子を食べたようにヒリヒリする痛みで傷はありません。口の渇き、渋味、苦味はなく、唾（だ）液は少なめです。歯科は異常がありませんが、心臓の薬を20年前から服用しています。
◎お茶などを飲み口の中を湿らす
ヒリヒリする口内痛の原因には大きくわけて、口内の乾燥によるもの、口内のカビの繁殖によるもの、心労によるものがあります。82歳という年齢から唾液腺（せん）の分泌機能が低下していることが考えられ、その場合、粘膜の発赤、ヒリヒリ感が生じる事があります。内服薬の影響は唾液の減少として現れることがあります。またカビでは口腔（こうくう）の常在菌であるカンジダが高齢になると口の中に繁殖してくることが多くなります。繁殖すると頬（ほお）粘膜や軟口蓋（がい）に白い苔様のものが付着します。付着までしなくてもカビが口腔粘膜の痛みとして関与する場合は多いようです。心労では、たとえば口腔癌（がん）などの心配が、実際は問題なくても口内の痛みとして現れることがあります。患者さんの訴えは以上のことが絡み合っているようです。病状的にはどれも大きな問題はないように思いますが、症状の改善策としては、お茶など水気のものを頻回に飲み口の中を湿らすこと、歯ブラシの励行、入れ歯は就眠時にははずすことをおすすめします。以上の事を励行してさらに痛みがあるようなら薬の内服をお勧めします。
（鳥取県立中央病院歯科口腔外科・谷尾和彦）