健康ア・ラ・カルト

【9)血液の病気】  1)鉄剤を飲むと胃が不調に

質問

30代の女性です。毎年夏になると貧血気味になります。かかりつけの医院で、鉄欠乏性貧血と診断され、鉄剤を飲んでいますが、胃の調子が悪くなり、何回も下痢をします。またコーヒーは、やめなければならないでしょうか。

回答

◎鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、偏食などによる鉄の摂取不足や、出血などによる鉄の喪失状態が続く場合に起こります。また妊産婦や月経中の女性では、鉄の需要増加により、貧血になる可能性も出てきます。

食事指導として、鉄分を多く含んだレバーやステーキなどの肉類、緑黄色野菜などの摂取を勧められたことと思います。薬物治療としては、経口鉄剤が服用方法や安全性の面からも適切な治療法と考えられています。

しかしご質問のように、経口鉄剤は胃腸障害や便通異常などの消化器系の副作用が出やすいために、治療を中断してしまう方がときどきあるようです。このような場合には主治医とよく相談して、他の鉄剤に変更してもらったり、適当な胃腸薬や下痢止めなどを合わせて処方してもらうことが大切です。

以前は鉄の吸収を高めるために、鉄剤を空腹時に服用せよとか、鉄剤服用後30分間は緑茶類の飲用は禁止せよという指導が行われていましたが、実際には緑茶類はあまり鉄の吸収を阻害しないというデータもあり、最近はその指導の根拠が疑われています。

緑茶類やコーヒーについては、経口鉄剤の服用と同時でなければ、特に禁止する必要はないと考えます。また食後の服用の方が、副作用の防止、長期服用が可能という点でもよいのではないかと思います。

鉄欠乏性貧血は、女性に多く、再発することも多いので、根気よく治療することが大切です。また鉄剤の服用でも貧血がなかなか改善しない場合には、消化性潰瘍(かいよう)やがんを疑って消化器系の精密検査が必要となることもあります。また成人女性では、子宮筋腫(きんしゅ)などが貧血の原因となっていることもありますので、かかりつけの医師と相談の上、婦人科の診察を受けることも重要です。

(東部医師会員・森 英俊)