健康ア・ラ・カルト

【15)皮膚 等】  1)貨幣大の脱毛

質問

51歳の主人のことで相談します。約2カ月半前に、耳後部に貨幣大の脱毛ができ、徐々に広がって、今では頭全体に広がりました。形は円形とは限りません。今までに同症状はありません。帽子はよくかぶる方で、汗かきです。会社の定期的検診では、血糖とコレステロールがやや高めでしたが、いたって元気です。食事にも気を使っています。

回答

◎円形脱毛症

脱毛を生じる疾患は種々ありますが、お手紙を拝見し、ご主人の脱毛は円形脱毛症と診断して差し支えないと思われます。

円形脱毛症にはさまざまなタイプがあり、軽症の単発型から多発して融合する型、頭部全体に及ぶ全頭脱毛症、全身の毛が抜ける汎(はん)発性脱毛症などがあります。

原因は以前から心身症説(ストレス説)、自律神経失調説、内分泌異常説、免疫異常説などが言われています。いずれにしても食餌(じ)で生じたり、悪化したりするものではありませんので、特に食餌に細かく神経を使われる必要はありません。

発症した時点では単発でとどまるのか、多発・融合型、または広範囲に及ぶのか推測できませんので、多発してくると、何か内臓の疾患があるのではないかとご心配かと思います。円形脱毛症を合併する疾患にアトピー性疾患、さまざまな自己免疫性疾患が言われていますが、お手紙を拝見する限り、そのご心配も不要かと思います。

治療には種々の方法があります。軽症のものは放置しても自然に治癒していきますので、特別な治療を必要としません。しかし、広範囲となるものは逆に難治で、なかなか発毛しなかったり、発毛しても再び脱毛となる場合もあったりで、皮膚科医にとって治療に苦慮する疾患の一つです。

副腎(じん)皮質ホルモンは、外用療法にはよく用いられます。しかし、内服や注射の治療法は効果があっても、副作用のため中止すると再び脱毛となることが多く、汎発遷延例、あるいは急性汎発型には使用されることもありますが、長期に及ぶ全身投与は慎重にされなければいけません。

その他、グリチルリチン製剤、セファランチン、抗アレルギー剤、抗うつ剤の内服治療、また外用療法として前述の副腎皮質ホルモン剤、血流改善を目的とする薬剤、局所療法として赤外線照射により局所の血流改善を図る方法、紫外線照射による局所刺激・免疫抑制療法、ドライアイス(雪状炭酸)による冷刺激、わざと接触皮膚炎を起こさせる局所免疫療法などがあります。

さまざまな治療方法があるということは、裏返して言えば絶対的な治療法が現在確立されていないと言えます。皮膚科専門の医療機関を受診され、根気よく治療する心構えで治療を続けて下さい。

(鳥取県立中央病院皮膚科・川口俊夫)