鳥取県医師会のご紹介

元気で明るい社会のために。

鳥取県医師会は社会保険医療・介護保険の充実、地域医療・地域保健並びに地域福祉の向上、医学教育の向上、公衆衛生の指導啓発をおこない、皆様の健康と医療を考えます。

鳥取県医師会長の令和6年年頭のご挨拶

 

 

 

 

 会長 渡 辺  憲

 

皆様、あけましておめでとうございます。

まず、新年早々、連日、大変な出来事が起きました。元日の夕刻に能登半島を震源として大きな地震が発生し、珠洲市、輪島市を中心に能登地方全体に甚大な被害が及んでおります。1月9日14時現在、石川県内において死者202人、安否不明者102人と公表されています。亡くなられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された多くの方々へお見舞い申し上げます。高齢者を含む数多くの方々が避難所、自宅において医療の必要な状況が続いております。発災直後より、石川県医師会 安田健二会長とメールで連絡を取り合っておりましたが、日本医師会へJ-MAT(災害医療チーム)の派遣要請を出されました。当会といたしましても、早速、J-MAT派遣の準備に着手いたしました。また、2日夕刻には、羽田空港の滑走路において、日航機が能登半島地震の被災地に物資を届けるための海上保安庁の航空機と衝突し、双方が大きく炎上する事故が起きました。この事故で、残念ながら海上保安庁の若い職員5名が亡くなりましたが、不幸中の幸いと申しますか、日航機の乗客乗員379人は奇跡的に全員脱出できました。日航機の乗務員の冷静な対応は称賛に値しますが、日頃のさまざまな事故を想定しての乗務員の訓練の賜物であるとともに、毎日の運航に際して乗客に常に安全確保に関するアナウンスを行うこと、すなわち乗客・乗員の協働した安全確保の意識を常に共有することの重要性をあらためて認識し、医療においても学ぶことが多いと感じました。

 

本年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とともに4年間が経過し、昨年5月の感染症法上5類に移行後、ウィズコロナ・ポストコロナの混在した状態から、ポストコロナのフェーズへ本格的に移行が期待される年となります。

 ウィズコロナの4年間を振り返りますと、令和2年~3年の第1波(武漢株)~第5波(デルタ株)では重症化リスクの高い株であったことに対し、令和4年~5年の第6波~第9波(いずれもオミクロン株の亜系統)においては、感染力は強いものの重症化リスクはデルタ株までに比べ低いため、さまざまな社会生活における制限は徐々に緩和されながら、現在に至っています。昨年11月~12月の定点医療機関における1日当たりの新規感染者数は全国、当県ともに概ね3~4人前後で、急速な増加がみられた季節性インフルエンザの1/10程度にとどまっていますが、決してCOVID-19が0となることはありません。インフルエンザと同等またはそれ以上の感染予防、症状発現時の早期検査、早期診断、さらには、診断が確定した際には、重症化リスクをもつ人への迅速な抗ウイルス薬の投与が求められる状況は続くと考えられます。このように、ポストコロナへの移行が進む中、社会生活においても、医療においても、常に『ウィズコロナ』を忘れてはなりません。

一方、令和2年から4年までの社会活動に制限が続いていた時期の「後遺症」とも考えられる若い年代のメンタルヘルスの問題、高齢者の心身のフレイルなど、医療がイニシアチブをとり、社会全体で取り組まなければならない課題も、今年に引き継がれています。

また、ウィズコロナの4年間から学んだこととして、地域医療をしっかり守るためには、国、都道府県、二次保健医療圏域において、それぞれ医師会が行政と緊密に連携することの重要性です。地域の実情を都道府県医師会から日本医師会へ報告し、国の政策につながる提言を行うことの重要性を再確認いたしました。加えて、全国知事会会長をお務めであった当県の平井伸治知事が国に対して積極的な提言を続けられたことも特筆すべきことと思います。以上のフレームワークは、今後、末永く記憶にとどめる必要があると思います。

 

今年は、ポストコロナの時代における地域の健康・医療課題を抽出・分析し、住民の方々の健康を維持するためのグランド・デザインである第8次保健医療計画の策定ならびに実施の年でもあります。この中で、COVID-19の4年間で学んだこと、新たな対策として取り組むべきことについて、従来の5疾病・6事業対策に加え、7事業目として「新興感染症発生・まん延時おける医療」が計画に盛り込まれることになりました。その他、これまで、県民の重要な健康課題として県と県医師会が協力して取り組んできました「がん対策推進計画」「循環器病対策推進計画」「肝炎対策推進計画」「健康づくり文化創造プラン」等も、今回の第8次計画に包括され、総合的に推進を目指すことになりました。これらを通して、健康で住みやすい、暮らしやすい鳥取県に向けて、医師会務にしっかり取り組んでまいりたいと存じます。

 

当県出身の世界的経済学者 宇沢弘文氏は、医療を、時の経済状況に左右されてはならない国民の幸福にとってかけがえのない『社会的共通資本』と表しました。ウィズコロナの4年間、医療界は皆様とともにさまざまな苦境を乗り越え、ポストコロナの新しい社会に向けて一歩二歩と着実に歩みを進めてきました。引き続き、皆様とともに地域医療において弛まぬ努力を続け、本年がコロナを真に克服した平穏ながら輝かしい1年となるよう祈念しております。

                      (令和6年1月9日)